2020.03.02 お役立ち情報
住宅購入時の贈与税は非課税にできる?特例の改正内容や計算方法を紹介
住宅取得費用は高額であるため、マイホーム購入時に両親から資金面でのサポートを受けるケースは珍しい話ではありません。
親子間であっても贈与税は発生しますので、その負担に不安を感じる方もいるでしょう。
そこで今回は、住宅購入時の贈与税を非課税にできる方法について解説しますので、マイホーム購入を検討中の方は、ぜひとも最後までお付き合い下さい。
目次
そもそも贈与税とは?
贈与税とは、人から現金や土地などの財産をもらったときに、その財産の価値に対して課せられる税制度です。
なお、贈与税には基礎控除額(110万円)があるため、1年間(1月1日から12月31日)に受けた贈与額がこれ以下であれば、非課税となります。
暦年課税
暦年課税とは、1月1日~12月31日までの1年間に贈与された財産の合計額をもとに課税される方式のことです。
1人当たりの基礎控除が110万円となりますので、その範囲内では贈与税の申告は不要とされています。
相続時精算課税
相続時精算課税とは、原則60歳以上の直系尊属(父母または祖父母)から、18歳以上の子または孫に対して財産を贈与した場合に選択できる課税方式のことです。
上限2,500万円の特別控除を受けられることが特徴であり、相続が開始されるまで何度贈与を受けても累計2,500万円までは非課税となります。
ただし、贈与者が死亡した場合は相続税の適用対象として相続財産に加算されることに注意して下さい。
贈与税を非課税にできる「住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例」
贈与税は、原則として110万円を超える贈与があれば課せられるものです。
しかし、この金額を超えても課税されない特例もあります。その一つが「住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例」です。
これは、住宅購入資金として使うお金を親や祖父母などから支援してもらう場合、最大で1,000万円まで非課税になるという特例です。
建物だけでなく土地の購入も、非課税の対象に含まれます。なお、この特例は期限が決まっており、2023年12月31日までとなっています。
特例を活用して最大1,000万円の贈与を非課税にできる
本特例を活用することで、耐震・省エネなど一定の基準を満たす住宅については最大1,000万円の贈与を非課税にすることが可能です。
ただし、上記以外の一般の住宅での非課税額は500万円となり、2022年の改正によりそれぞれの非課税額が変更したことを覚えておきましょう。
非課税限度額は家の機能と契約日で異なる
この特例によって贈与額は、いくらまでなら非課税になるのでしょうか。
「住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例」には細かな規定があり、それによって非課税限度額も変わります。
おおまかにいうと、「一定基準を満たす住宅かどうか」と「契約締結日」の二つで非課税限度額が異なります。
一定基準を満たす住宅とは、以下3点のいずれかを満たす家のことです。
1. 断熱等性能等級4または一次エネルギー消費量等級4以上
2. 耐震等級2以上または免震建築物
3. 高齢者等配慮対策等級3以上
また、契約締結日とは売買契約または請負契約などを結んだ日のことです。贈与した日ではないことに注意しましょう。この二つの要因から、非課税限度額を以下の表に示します。
一般住宅 | 一定基準を満たす住宅 | |
---|---|---|
2020年4月1日~2021年12月31日 | 1,000万円 | 1,500万円 |
2022年1月1日~ | 500万円 | 1,000万円 |
ちなみに、贈与税の基礎控除(110万円)と併用もできるため、最大1,110万円までの贈与額を非課税にすることが可能です。
特例が受けられる人
「住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例」を受けるには、いくつかの条件を満たす必要があります。
1. 直系尊属からの贈与であること
2. 贈与を受けた年の1月1日現在で18歳以上の人
3. 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下
4. 日本国内に住所がある人
5. 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、住宅の引き渡しを受け入居すること
「1」の直系尊属とは、贈与を受ける人の両親や祖父母を指します。
配偶者の両親や祖父母は直系尊属ではないので、特例は適用されないことに注意が必要です。
また、贈与税の申告期限は翌年3月15日ですから、それまでに贈与された資金をすべて使って家を建て住み始めなければ、特例が適用されないこともあります。
つまり、2022年中に契約した家の引き渡しが2023年3月16日以降の場合、非課税にならないことがあります。
この場合、2023年に贈与を受け、引渡時に支払う残金決済などに贈与額を当てるといった工夫が必要になります。
【2022年】住宅購入時における贈与税の非課税特例の改正内容
2022年の住宅購入時における贈与税の非課税特例の改正内容を以下の通りまとめていますので、制度を利用する上でどのような影響があるかを把握しておきましょう。
● 適用期限
● 非課税限度額
● 既存住宅の要件
● 受贈者の年齢要件
順番に解説します。
適用期限
適用期限については、2021年12月31日までの措置でしたが、2年間延長されて2023年12月31日まで制度の適用が可能となりました。
非課税限度額
非課税限度額については、一般住宅で1,000万円から500万円、省エネ等住宅で1,500万円から1,000万円とそれぞれ引き下げられています。
非課税限度額を超える部分については、贈与税が発生しますので、年間110万円以下の金額を複数年に分けて贈与してもらうなどの工夫をマイホーム取得計画に取り入れてみましょう。
既存住宅の要件
取得の日以前20年以内(耐火建物は25年以内)に建築されていることと定められていた築年数の要件が撤廃され、1982年1月以降の新耐震基準に適合していれば制度の利用が可能となりました。
受贈者の年齢要件
民法改正に伴う成人年齢の引き下げに伴い、受贈者の年齢要件についても、従来の20歳以上から18歳以上へと引き下げられました。
住宅購入時における贈与税の非課税特例が受けられる住宅
住宅にも、特例の対象となる条件があります。
その条件は、「新築」「中古」「増改築」によって異なりますので、以下を参照ください。
● 新築の場合
● 中古住宅の場合
● 増改築する場合
順番に解説します。
新築の場合
新築の場合、以下3点のすべてを満たす必要があります。
1. 日本国内で建てた住宅
2. 登記簿上の床面積は40㎡以上240㎡以下(マンションは専有面積)
3. 床面積の半分以上を住居として使用すること
中古住宅の場合
中古住宅の場合、新築の条件に加え次のいずれかの要件を満たす必要があります。
1. 建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、昭和57年1月1日以後に建築されたもの(新耐震基準)
2. 建築後使用されたことのある住宅用の家屋で、地震に対する安全性に係る基準に適合するものであることにつき、一定の書類により照明されたもの
3. 購入後に耐震改修工事を行い、贈与を受けた年の翌年3月15日までに一定の耐震基準に適合するのを証明された住宅
増改築する場合
増改築した家の場合、新築の条件に加えて以下の条件を満たす必要があります。
1. 工事費用は100万円以上。うち半分以上が住居部分の工事に充てられること
2. 自身が所有かつ居住する家であること
なお、いずれの場合も配偶者や親族など特別の関係がある人から取得した住宅ではないことが前提です。
住宅購入時に贈与税がかかる場合の計算方法
上記の条件にあてはまらない場合、住宅購入時に贈与税が課せられます。贈与税額を求める公式から算出しましょう。贈与税額は、以下の公式から求められます。
【贈与税額】
課税価格(贈与財産-110万円)×贈与税率-控除額
上記公式の贈与税率と控除額は、課税価格によって変わります。また、贈与した人が直系尊属かどうかによっても異なるため注意しましょう。
たとえば、課税価格が200万円以下(310万円以下の贈与)なら、直系尊属か否かは関係なく贈与税率は10%、控除額はなしです。
ところが、課税価格が600万円を超えて1,000万円以下の場合、贈与税率は直系尊属なら30%、直系尊属以外なら40%になり、控除額は直系尊属なら90万円、直系尊属以外なら125万円となります。
複雑な仕組みですから、一例を挙げましょう。たとえば、1,000万円の資金援助を「親から受けた場合」と「兄弟から受けた場合」の贈与税額を求めます。
【親(直系尊属)から受けた場合の贈与税額(特例税率)】
(1,000万円-110万円)× 30%-90万円=177万円
【兄弟から受けた場合の贈与税額(一般税率)】
(1,000万円-110万円) × 40% - 125万円= 231万円
贈与税額が変われば、当然手元に残る金額も変わります。上記の例だと、直系尊属の親から1,000万円を贈与された場合の手元に残る金額は823万円、兄弟からだと769万円です。
「住宅取得等資金贈与の非課税の特例」の注意点
特例を受けると贈与税が抑えられるというメリットがありますが、注意点もいくつかあります。具体的には、以下の点を把握しておきましょう。
● 贈与のタイミングによっては特例が適用されないことがある
● 住宅ローン控除と併用するときは適用額に注意
● 贈与税が0円でも必ず申告が必要
● 資金援助は黙っていても発覚する
順番に解説します。
贈与のタイミングによっては特例が適用されないことがある
先述の通り、特例を受けるには贈与を受けた翌年3月15日までに、住宅の引き渡しを受けて入居することが条件の一つです。
もし、何らかの事情で翌年3月15日までに家が完成しなければ、特例を受けられません。なお、「工事が完了に準ずる状態にある」と認められた場合には、特例を受けられます。
また、住宅ローンの決済後の贈与も特例を受けられないので注意が必要です。
住宅ローンを利用される方は、住宅ローンの決済前に贈与を受け住宅購入資金に充てる必要があります。
住宅ローン控除と併用するときは適用額に注意
親から資金援助を受けるケースでも、多くの方は住宅ローンを利用されるでしょう。
住宅ローンを利用すると、所得税や住民税が抑えられる「住宅ローン控除」が適用されます。これは、年末のローン残高の0.7%が税額から控除される制度です。
住宅ローン控除は「住宅取得等資金贈与の非課税の特例」と併用することが可能です。ただし、親からの資金援助が多いとローン残高が減るため、住宅ローンの控除額も減ってしまう点に注意して下さい。
住宅ローン控除を最大限に活用するためには、資金援助をどれくらいの額にするかを事前に計算する必要があります。
贈与税が0円でも必ず申告が必要
「住宅取得等資金贈与の非課税の特例」を受けるには、管轄税務署への届出が必要です。
たとえ税額が0円であっても、申告しなければ特例の適用外となり、多額の贈与税が課せられることもありますので、忘れないように申告しましょう。
税務署への申告期間は、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日です。
もちろん、この期間を過ぎると特例の適用外となります。事前に以下のものを準備して、申請に臨みましょう。
資金援助は黙っていても発覚する
上述の通り、住宅取得のため親から多額の資金援助を受けた場合には、管轄税務署に届け出ないと多額の贈与税が課せられます。
「親子間の資金援助なんだから、届出しなければバレないのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、黙っていてもいずれ発覚する場面があります。
たとえば、不動産登記の場面。不動産登記をする際には法務局で登記変更が必要です。その情報が税務署にも知らされ、贈与税の無申告が発覚することがあります。
また、相続の場面でも発覚することがあります。税務署は、銀行口座の履歴を過去にさかのぼって調査できる権限を持っているため、多額のお金の移動があった履歴が見つかれば、贈与税の無申告が発覚することもあるのです。
最近ではマイナンバー制度の導入により、個人の所得金額や預金額、お金の流れなども容易に把握できるようになっています。
そのため、親子間で多額の預金の移動があったケースも特定されやすいのです。仮に無申告であることが発覚すると、延滞税のほか、隠ぺいの疑いがあるとして重加算税(35~40%)が課されることもありますので、必ず申告しましょう。
住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例を使用しない方が節税できるケース
住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例を使用しない方が節税に繋がるケースを以下の通りまとめていますので、自分たちの家計の状況を見極めた上で判断して下さい。
● 相続税の小規模宅地等の特例
● 相続時精算課税制度
順番に解説します。
相続税の小規模宅地等の特例
相続税の小規模宅地等の特例は、亡くなった親(被相続人)の自宅を相続する際に、その物件の評価額を330㎡まで8割減にできる制度であり、相続税の圧縮に繋がります。
相続税の小規模宅地等の特例が適用できるのは、配偶者・同居親族・家を持っていない親族に限られるため、両親から資金援助を受けて住宅を購入した場合、制度の利用ができません。
どちらが得になるかは、人それぞれではありますが、将来発生する相続税の負担を踏まえて判断することをおすすめします。
相続時精算課税制度
住宅取得等資金の非課税の特例では、非課税額の上限を超えた部分については贈与税が発生しますので、相続時精算課税制度の利用(併用)により節税に繋がる可能性があります。
具体的には、将来の相続財産が基礎控除に収まるケースなどが想定されますが、どちらがお得であるかはシミュレーションして確認するしかありませんので、税理士など専門家と相談して判断して下さい。
非課税限度額以上に贈与を受けたい場合
さまざまな事情から、非課税限度額よりも多い資金援助を親から受けたい方もいらっしゃるでしょう。当然、上限を超えた分には贈与税がかかります。
非課税限度額を超える額が200万円の場合は約9万円が、500万円だと約48万円の贈与税が課せられます。ただし、非課税限度額を超えた分の贈与税を抑える方法もいくつかあります。具体的な方法を紹介しましょう。
● あらかじめ毎年110万円ずつ贈与を受けておく
● 相続時精算課税を選択する
● 共有名義にする
順番に解説します。
あらかじめ毎年110万円ずつ贈与を受けておく
「住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例」の適用を受ける数年前から、基礎控除(110万円)以内で支援を受けるという方法です。
たとえば、5年前から110万円ずつ贈与してもらえば、非課税で550万円貯めることができるでしょう。地道な方法ですが、計画的に準備できるのであれば、これも一手です。
相続時精算課税を選択する
相続時精算課税とは、贈与税を非課税とする代わりに相続税を課税にする制度です。2,500万円までの贈与に対して適用され、しかも「住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例」との併用もできます。
たとえば、親から4,000万円の支援を受けたいが、特例の非課税限度額が1,000万円という場合、相続時精算課税(2,500万円まで)を合わせて非課税で受けることが可能です。
なお、相続時精算課税を利用すると、贈与した人からはその後、基礎控除(110万円)が利用できなくなります。
また、相続税額の方が高くなるケースがありますので、事前にシミュレーションして判断されることをおすすめします。
共有名義にする
譲渡ではなく、親が支払った分は親の持ち分とし、建物を共有名義にするという方法です。
たとえば、4,000万円の家を自己資金と親の資金を2,000万円ずつ出し合って共同購入し、持ち分を半々にします。これは贈与ではないため、贈与税はかかりません。
また、親子でシェアしているのは所有権のみであるため、親と一緒に住む必要もありません。「住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例」を活用することで、自らの持ち分を増やすこともできます。
上記の例で、仮に特例の非課税限度額が1,000万円だとした場合、基礎控除とあわせて1,110万円が非課税で贈与を受けられます。
これを自己資金(2,000万円)と併せれば3,110万円、親の資金は890万円となり、持ち分は子が約8割、親が約2割とすることも可能です。このように、持ち分を多くすることで相続税対策にもつながります。
なお、相続の観点から共有名義には注意点もあります。
法定相続人が他にもいる場合、家の持ち分はその人にも相続されてしまいます。
法定相続人が多いほど権利関係が複雑になり、トラブルになる可能性もありますので、「共有持ち分は、その家の所有者である子に相続する」といった親の遺言を残しておきましょう。
住宅購入時に贈与以外で資金の援助を受ける方法
上述の共有名義のほかにも、贈与以外で資金援助をかなえる方法はあります。その一つが、「親子間融資」であり、お金をもらうのではなく「借りる」という方法です。
贈与ではないことが公的に認められるよう借用書を作成し、返済も銀行振込みなど履歴が残る方法で行います。
なお、借りた資金には利子を設定しないと利息分が贈与とみなされますので、利率も決めましょう。
また、返済も定期的に行わなければ贈与とみなされることがありますので、住宅ローンの支払いと同じく、毎月一定額を返済していくスキームを親子間で取り決めることが親子間融資のポイントとなります。
住宅購入時における贈与税の非課税に関するよくある質問
住宅購入時における贈与税の非課税に関するよくある質問をまとめていますので、他の方の疑問点を自分たちに置き換えて考えてみましょう。
● 「住宅取得等資金の贈与税の非課税特例」の申請期限を過ぎた場合どうなる?
● 住宅取得等資金贈与は諸費用にも利用できる?
● 「住宅取得等資金贈与の非課税の特例」の申請には何が必要になる?
順番に解説します。
「住宅取得等資金の贈与税の非課税特例」の申請期限を過ぎた場合どうなる?
申請期限は贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日であり、申告をせずに期限を過ぎてしまった場合、特例の適用はできなくなります。
加えて、本来支払うべき贈与税の他に、5〜20%の無申告加算税や納付が遅れた分の延滞税が発生しますので、納税額がゼロでも絶対に申告を忘れないようにして下さい。
住宅取得等資金贈与は諸費用にも利用できる?
住宅取得等資金贈与は諸費用には利用できません。
諸費用は非課税制度の対象外となりますので、暦年課税の基礎控除110万円までの贈与分を利用して下さい。
「住宅取得等資金贈与の非課税の特例」の申請には何が必要になる?
非課税特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書の他に、戸籍謄本や取得した住宅の請負(売買)契約書、登記事項証明書などを添えて、納税地の所轄税務署へ提出して下さい。
まとめ:住宅購入時は非課税の特例を利用して住宅ローンの借入額を抑えよう
住宅取得費用は高額であるため、非課税特例を利用しなければ、相応の贈与税を負担することになります。
資金面のサポートを両親から受けられるケースでは、非課税特例の概要を把握して、住宅の取得による家計への負担を抑えることが重要です。
特に、住宅性能による税制面の優遇は今後も続くことが予想されますので、どんな家に住みたいかを考える上でも、制度の概要を押さえておきましょう。
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