2024.03.22 お役立ち情報
フラット35Sとは?フラット35との違いや基準もわかりやすく解説
この記事では、フラット35Sとは何か解説していきます。
『フラット35』は、住宅金融支援機構と民間の金融機関が連携して提供する固定金利型の住宅ローンです。審査基準が比較的緩く、また固定金利のなかでは低金利であることから注目されています。
このフラット35には、『フラット35S』という同様の商品もあります。金利を見るとフラット35より低いため、フラット35Sを利用したいと考えている人も少なくありません。
しかし、フラット35Sを利用するには、一定の条件を満たす必要があります。どのような人が『フラット35S』を利用できるのか、またフラット35との違いや特徴などもまとめて紹介します。
【この記事でわかること】
- フラット35Sとは
- フラット35Sで利用できる金利プラン
- フラット35・フラット35Sの返済額をシミュレーションで比較
- フラット35Sを利用するメリット
- フラット35Sを利用する注意点
目次
フラット35Sとは?
フラット35Sとは、耐震性や耐久性、省エネ性、バリアフリー性などの一定の条件を備えた質の良い家を建てたり購入したりする人に提供する住宅ローン商品です。
注文住宅を建てる人がフラット35Sを利用する場合には、あらかじめ適用条件を満たす仕様にする必要があります。
続いて、通常のフラット35とフラット35Sの違いを解説していきます。
通常のフラット35との違い
フラット35との違いは、金利が一定期間優遇されることです。フラット35は、完済まで金利が変わらない『長期固定金利型』の住宅ローンであり、返済が始まってから完済するまでの返済計画が立てやすくなっています。
一方でフラット35Sは、フラット35の申込者が条件に当てはまる家を建てたり、購入したりしたときに、適用金利を一定期間引き下げる制度です。
フラット35Sには2つの金利プランがあるものの、金利以外の点ではフラット35とほぼ同じです。例えば、以下の条件はフラット35Sも同じです。
- 申込時の年齢が70歳未満であること
- 借入額は最高8,000万円以下であること
- 借入期間
- 床面積
- 返済負担率(年収400万未満の場合は30%以下、400万円以上の場合は35%以下)
上記の類似点や違いがあるのが、フラット35Sといえます。
フラット35Sで利用できる金利プラン
フラット35Sには、金利が優遇される幅の違いによって2つのプランが用意されています。1つは借入当初から5年間の金利が0.5%引き下げられる『金利Aプラン』、もう1つは金利が0.25%引き下げられる『金利Bプラン』です。
誰もが金利引き下げ幅の大きい金利Aプランを利用したいと思われるでしょうが、それぞれの住宅ローンを利用するには一定の条件がありますので、確認しておきましょう。
- 金利Aプランの技術基準
- 金利Bプランの技術基準
順番に見ていきます。
金利Aプランの技術基準
フラット35Sの金利Aプランは、借入当初から5年間の金利が0.5%引き下げられます。金利Bプランよりも金利の引き下げ幅が大きいため、求められる住宅の基準は厳しくなるのが特徴です。
金利Aプランは、次の5つのうちいずれか1つ以上の基準を満たす新築住宅でなければなりません。
省エネ性 |
1:断熱等性能等級5以上の住宅で、かつ、一次エネルギー消費量等級6の住宅 |
耐震性 |
2:耐震等級3の住宅 3:免震建築物 |
バリアフリー性 |
4:高齢者等配慮対策等級4以上の住宅 |
耐久性・可変性 |
5:長期優良住宅 |
※参考:【フラット35】Sの対象となる住宅|住宅金融支援機構
中古住宅の場合は、次の7つのうちいずれか1つ以上の基準を満たす必要があります。
省エネ性 |
1:断熱等性能等級4以上の住宅で、かつ、一次エネルギー消費量等級6の住宅 2:断熱等性能等級5以上の住宅で、かつ、一次エネルギー消費量等級4以上の住宅 |
耐震性 |
3:耐震等級2以上の住宅 4:免震建築物 |
バリアフリー性 |
5:高齢者等配慮対策等級3以上の住宅 |
耐久性・可変性 |
6:長期優良住宅 7:劣化対策等級3の住宅で、かつ、維持管理対策等級2以上の住宅 |
※参考:【フラット35】Sの対象となる住宅|住宅金融支援機構
金利Bプランの技術基準
フラット35Sの金利Bプランは、借入当初から5年間の金利が0.25%引き下げられます。金利Aプランでは以下4つのうち、いずれかで最上等級を満たす必要があります。
- 耐震性
- 省エネ性
- バリアフリー性
- 耐久性・可変性
一方、金利Bプランは金利Aプランで求められる等級のすぐ下といったイメージです。金利Bプランは、次の5つのうちいずれか1つ以上の基準を満たす新築住宅でなければなりません。
省エネ性 |
1:断熱等性能等級4の住宅で、かつ、一次エネルギー消費量等級6の住宅 2:断熱等性能等級5以上の住宅で、かつ、一次エネルギー消費量等級4または等級5の住宅 |
耐震性 |
3:耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上の住宅 |
バリアフリー性 |
4:高齢者等配慮対策等級3以上の住宅 |
耐久性・可変性 | 5:劣化対策等級3の住宅で、かつ、維持管理対策等級2以上の住宅 |
※参考:【フラット35】Sの対象となる住宅|住宅金融支援機構
中古住宅の場合は、次の3つのうちいずれか1つ以上の基準を満たす必要があります。
省エネ性 |
1:開口部断熱 2:外壁等断熱 |
バリアフリー性 |
3:高齢者等配慮対策等級2以上の住宅 |
※参考:【フラット35】Sの対象となる住宅|住宅金融支援機構
金利Aプランは金利Bプランより優れた機能を満たす新築住宅を建築・購入する必要があり、コストも高くなりやすい点が特徴です。しかし、その分ローン返済総額を抑えることで相殺できれば、金利Aプランのほうがお得といえます。
フラット35・フラット35Sの返済額をシミュレーションで比較
フラット35Sはフラット35を利用する場合と比べて、ローン返済総額がどのくらい抑えられるのかシミュレーションで比較していきます。
ここでは3つのパターンに分けて、以下の借入条件のもと、ローンの返済総額がいくらになるかを試算しました。
- 『フラット35』
- 『フラット35S(金利Aプラン)』
- 『フラット35S(金利Bプラン)』
【借入条件】
- 住宅ローン借入額:3,000万円(融資率9割以下)
- 返済期間:35年
- 金利:年1.80%
- 返済方式:元利均等返済
- ボーナス返済:なし
金利プラン |
フラット35 |
フラット35S(金利Aプラン) |
フラット35S(金利Bプラン) |
金利 | 全期間:年1.80% |
当初5年間:年1.30% 6年目以降:年1.80% |
当初5年間:1.55% 6年目以降:年1.80% |
毎月の返済額 |
9.7 万円 |
当初5年間:8.9万円 6年目以降:9.6万円 |
当初5年間:9.3万円 6年目以降:9.6万円 |
返済総額 |
4,046万円 |
3,966万円 |
4,006万円 |
フラット35との返済総額の比較 |
‐ |
▲80万円 |
▲40万円 |
フラット35Sを利用すると、金利Aプランでは約80万円、金利Bプランでは約40万円も返済総額を抑えられることがわかりました。
フラット35Sによってローン返済総額が安くなっても、住宅の購入価格や建築価格が高くなりすぎては損してしまいます。得を感じられる範囲内で購入あるいは建築をしたい場合は、フラット35との返済総額の差がコストアップの上限といえるでしょう。
フラット35Sを利用するメリット
フラット35Sは、フラット35よりもローン返済総額を抑えられるメリットがあります。そのほかにもフラット35Sにはさまざまなメリットがあるため、ここでは3つのメリットを解説します。
- 性能が高い住宅に住める
- さらなる金利の引き下げを期待できる
- 子育て支援型・地域活性化型と併用できる
順番に見ていきましょう。
性能が高い住宅に住める
そもそもフラット35Sを利用できるのは、省エネ性や耐久性などに優れた家であるため、住み始めてからのランニングコストも抑えられる可能性が高いといえます。
例えば、省エネ性に優れた家は年間の光熱費が、耐久性・可変性に優れた家は将来のメンテナンス費が抑えられるでしょう。
また、フラット35Sを利用するには高い性能が求められる分、売却時には買主が見つかりやすくなるため有利です。
さらなる金利の引き下げを期待できる
フラット35Sは、家族構成や住宅性能によってさらなる金利の引き下げが期待できます。建築・購入した家が金利Aプランかつ長期優良住宅であれば、最大0.75%の金利引き下げが可能です。
長期優良住民であれば、住宅ローン控除額も一般の家と比べて大きくなるほか、固定資産税の減税期間も長くなることが魅力です。また、耐震性の条件もクリアしているため地震に強い家として地震保険料の割引も受けられます。
家族構成に関しては、子供の人数に応じて金利の引き下げ期間が長くなります。
子育て支援型・地域活性化型と併用できる
フラット35Sは、フラット35の子育て支援型・地域活性化型と併用ができます。
フラット35の子育て支援型・地域活性化型とは、子育て支援や地域活性化に関わる取り組みを行う地方公共団体と住宅金融支援機構が連携してできた制度です。
地方公共団体の住宅取得に関連した補助金とセットで、フラット35の金利を一定期間引き下げられるメリットがあります。
フラット35Sはフラット35の金利よりも0.25〜0.5%低くなっていますが、子育て支援型・地域活性化型を併用することで当初5年間、最大1%の金利の引き下げが可能です。
フラット35Sの注意点
フラット35Sのメリットを紹介してきましたが、利用する際には注意したいポイントもいくつかあります。
- 建築コストが割高になりがち
- 申込受付が終了している可能性がある
- 引き下げ適用期間が終わると金利が上がる
順番に解説していきます。
建築コストが割高になりがち
フラット35Sの利用条件を満たすには、家の性能を高める必要があります。このため、建築コストに跳ね返ることは把握しておきましょう。
ただし先述の通り金利が優遇されるため、金利Aプランなら約80万円、金利Bプランなら約40万円まで建築コストがアップしても、フラット35Sのほうがお得になります。加えてランニングコストも抑えられるため、多少建築コストが高くなっても長い目で見ればお得でしょう。
申込受付が終了している可能性がある
フラット35Sは毎年提供できる予算が決まっているため、予算上限に達したらその時点で申込受付が終了します。受付終了日は、終了する3週間前までにフラット35の公式サイトに掲載されるため、利用を検討している人はチェックしておきましょう。
また、今後もフラット35Sが提供され続けるとは限りません。現在の家は、フラット35Sの利用条件を満たす家が増えているため、商品自体が今後なくなる可能性もあります。
引き下げ適用期間が終わると金利が上がる
フラット35は固定金利型の住宅ローンであるため、返済終了まで毎月の支払額は変わらない商品です。
ただし、フラット35Sは優遇期間が終われば支払額がアップします。フラット35Sの返済計画を立てる際には、それを見越したうえで資金計画を立てることもポイントです。
借り換えには利用できない
現在、フラット35やほかの住宅ローンを利用されている人は、フラット35Sに借り換えできません。
フラット35同様、フラット35Sは新規で住宅ローンを契約される人のみを対象とした商品です。
ほかのローンから借り換えを検討されている人は、フラット35以外の商品を選ぶことになります。
フラット35Sに関するよくある質問
ここでは、フラット35Sに関するよくある質問に回答します。
- フラット35Sで団信は任意?
- フラット35Sは頭金なしで利用できる?
- フラット35Sの技術基準が変更になったって本当?
順番に見ていきましょう。
フラット35Sで団信は任意?
団信(団体信用生命保険)とは、住宅ローンの契約者が返済途中で亡くなったり、高度障害になったりして返済ができなくなったときに、生命保険会社が被保険者に代わってローン残債相当額を金融機関に保険金として返済する保険です。
フラット35Sは団信への加入が任意であり、住宅ローンの契約者が何らかの理由で返済できなくなった場合は、家を相続した人が引き続き返済することになります。
とはいえ、健康状態に問題があって一般的な住宅ローン審査に落ちてしまった人でも、団信への加入が任意であるフラット35Sの審査には通る可能性があることがメリットです。
フラット35Sは頭金なしで利用できる?
フラット35Sでも10割融資は可能です。しかし、融資率が9割を超える場合、融資率が9割以下の場合と比較して、返済の確実性などをもとに慎重に審査されます。
借入総額の金利が一定程度高くなるので注意が必要です。
フラット35Sの技術基準が変更になったって本当?
脱炭素社会の実現に向けた取り組みの加速やより高い水準のバリアフリー性能確保を支援するため、2022年10月以降の設計検査申請分から基準が見直されています。
金利Aプラン、金利Bプランの『省エネ性』はより厳しい基準に変わっているのがその一例です。
フラット35Sの特徴を把握して自分に合った住宅ローンを選ぼう
フラット35Sを利用できる家を建てることで、ローンの返済総額や住み始めてからのランニングコストを抑えられるなど、さまざまなメリットが享受できます。
近年建てられる家は、フラット35Sが適用される高性能な家が標準仕様になっています。固定金利型の住宅ローン商品を検討されている人は、金利が優遇されるフラット35Sもご検討ください。
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