2024.10.30 お役立ち情報
自営業者の住宅ローンの審査基準は?必要な書類や対処法やポイントを解説
自営業者(個人事業主)は給与所得者と比較して、収入の安定性などの面から住宅ローン審査のハードルが高くなりがちです。しかし、必ずしも融資を受けられないわけではありません。
そこでこの記事では、自営業者の住宅ローンの審査基準について解説していきます。マイホーム購入を検討中の人は、ぜひ参考にしてください。
【この記事でわかること】
- 自営業の人が住宅ローンを申込む場合の審査基準
- 自営業者が住宅ローンの審査に通るための対策
- 自営業の人が住宅ローンを借入するときの注意点
目次
自営業だと住宅ローン審査に通らないのか
結論として、自営業であっても住宅ローン審査に通る可能性はあります。金融機関が審査のポイントとして重視するのは、安定的な返済を見込めるかという点です。
そのため、会社員や公務員など、一定の収入が毎月入る人は有利といえます。
一方、自営業は収入に大きな変動が生じ、経済的に不安定になるケースがあります。審査に消極的な金融機関が多い傾向もあります。
なお、自営業の場合は年収ではなく、収入から必要経費を差し引いた額で審査されます。主な金融機関別に、自営業で必要な事業年数と所得をまとめた表は以下のとおりです。
金融機関名 | 事業年数 | 前年度の所得 |
ソニー銀行 | ー | 400万円以上 |
みずほ銀行 | ー | 安定した収入のある人 |
ろうきん | 3年以上 | 150万円以上 ※税込み年収 |
SBI新生銀行 | 2年以上 | 300万円以上 |
りそな銀行 | 3年以上 | 100万円以上 ※税込み年収 |
金融機関により事業年数と所得の要件に違いがありますが、安定した収入があれば自営業でも住宅ローンを借りられる可能性があります。
自営業の人が住宅ローンを申込む場合の審査基準
自営業者に対する金融機関の審査ポイントを、具体的に説明しましょう。
- 審査ポイント安定した収入
- 審査ポイント事業の継続性
- 審査ポイント他のローンの借入額や遅延履歴
- 審査ポイント返済負担率
- 審査ポイント年齢や健康状態
- 審査ポイント連帯保証人の有無
順番に解説します。
審査ポイント1.安定した収入
自営業者の収入(所得)は、確定申告書で確認され、安定した収入があるかを審査するため、ほとんどの金融機関では直近3年分を求めています。
また、審査基準は金融機関によって異なることに注意が必要です。3年前の所得が200万円で一昨年が400万円、昨年が600万円の人を例にして考えましょう。
その場合、3期の平均額(400万円)を審査基準にする金融機関もあれば、最も低い額(200万円)を審査基準にするところもあります。
いずれかの年に赤字があれば、審査ポイントを大きく下げるため注意が必要です。
審査ポイント2.事業の継続性
公務員や会社員は、「勤続年数が3年以上」が住宅ローン審査の基準の1つになっています。
自営業者も同じく、3年以上続けていることがポイントです。
ただし、金融機関によっては事業年数を要件に加えていないところも見受けられます。
審査ポイント3.他のローンの借入額や遅延履歴
給与所得者も自動車ローンなどの借入額が審査基準の1つになりますが、自営業者の場合、事業を回すうえで必要な資金を借り入れしている人も少なくないでしょう。
年収に対する借入額の割合が多いと審査がマイナスに働くため、月々の支払いが多い人は要注意です。
さらに、ローンの支払いで滞納履歴のある人は、審査に落ちる可能性が非常に高くなります。ローンだけでなく、税金や健康保険料の滞納も同じです。
「滞納したことはない」と申込時に嘘をついても、金融機関では信用情報や納税証明書などから過去の滞納履歴をチェックしています。
審査ポイント4.返済負担率
返済負担率とは、年収(自営業者の場合は過去3年の平均所得)に占める住宅ローンの年間返済額の割合のことで、30〜35%以内が審査基準の目安とされています。
また、返済負担率の算出には、自動車ローンや奨学金など住宅ローン以外の借入の他に、事業資金も含まれる点に注意が必要です。
審査ポイント5.年齢や健康状態
年齢や健康状態も審査基準の1つであり、一般に年齢が上がるほどネガティブな要因としてとらえられる傾向にあります。
申込時の年齢が高いほど長期の返済期間を設定しにくいことや、健康状態に不安を抱える可能性が高くなる点が理由であり、借入可能額にも影響を与えることを覚えておきましょう。
なお、国土交通省がまとめた『令和5年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書』によれば、金融機関が重視する審査項目の1位は「完済時年齢」でした。次いで2位が「健康状態」、3位が「借入時年齢」となっています。
※参考:令和5年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書|国土交通省
審査ポイント6.連帯保証人の有無
通常、住宅ローンを借りる際には保証会社を利用するため、連帯保証人は不要です。しかし、自営業者は、保証会社だけでは担保が不十分になると判断されると、連帯保証人を立てることを条件に承認されるケースがあります。
連帯保証人を立てることで、希望する借入額で審査が通る可能性が広がります。
自営業者が住宅ローンの審査に通るための対策
自営業者が住宅ローンの審査に通るための対策は以下のとおりです。
- 頭金を増やして返済比率を下げる
- 現在の借入額を減らす
- 自営業でも審査が通りやすい銀行を選ぶ
それぞれの対策について見ていきましょう。
頭金を増やして返済比率を下げる
頭金を増やせば、借り入れする融資額は少なくなり返済額も抑えられます。
また、計画的に貯蓄していることを金融機関にアピールすることにもつながり、審査にプラスの影響を与えるでしょう。
自己資金では難しい場合には、親類などから支援してもらうのも1つの手段です。
現在の借入額を減らす
住宅ローン以外にも融資を受けている場合、できるだけ減らしてから申込むようにしましょう。
目安として、住宅ローンを含めた返済負担率を30%以下にすることをおすすめします。
例えば、年収400万円の人が毎月10万円(年間120万円)をローン返済に充てるとすれば、返済負担率は30%になります。
多くの金融機関では、30〜35%以下を返済負担率の基準としています。借金の多い人は、住宅ローンの返済額を含めて30%以下になるよう減らす工夫をしましょう。
自営業でも審査が通りやすい銀行を選ぶ
自営業者に特別扱いで融資している金融機関は少ないですが、自分にとって融資を受けやすい金融機関はあるでしょう。
よく取引している銀行や信用金庫なら、住宅ローンの審査が通りやすくなる場合もあります。
具体例を挙げると、事業用のメインバンクであれば事業内容の説明や将来の見通しなどを説明しやすく、貸し倒れのおそれを他の金融機関より的確に判断できます。
したがって、積極的に融資してくれるでしょう。
また、ノンバンクを中心に事業年数を設定していない銀行もあります。申込書類に直近3年分の確定申告書を求めているところもあるため、必ずしも審査ハードルが低いとはいえません。
自営業の人はフラット35がおすすめ
金融機関が提供する住宅ローンのなかでも、自営業者にやさしいといわれる商品が「フラット35」です。
- フラット35も信用情報が審査基準になる
- 直近1期分のみが所得の審査対象になる
- 金利タイプは全期間固定金利である
ここからは、フラット35の特徴について解説します。
フラット35も信用情報が審査基準になる
フラット35は、住宅金融支援機構と全国300以上の民間金融機関が提携して提供する、最長35年の全期間固定金利の住宅ローンです。申込者は信用情報で返済能力を判断されます。
具体的に見られるのは、税金やローンの滞納です。滞納歴があると、審査を通過するのは難しくなります。
身に覚えがある場合は、住宅ローン審査を申込む前に信用情報機関へ確認しましょう。
直近1期分のみが所得の審査対象になる
フラット35では、事業継続年数は問われず、審査に必要な確定申告書は1期分で良いため、一昨年が赤字でも前期の所得が多ければ審査に通る可能性はあります。職業や勤務先も不問で、決算書も不要です。
一般的な金融機関の住宅ローンでは、直近の3期分が審査対象であり、赤字でないことが条件です。したがって、自営業者にとってフラット35は、審査基準が緩いといえます。
金利タイプは全期間固定金利である
フラット35は、金利タイプが全期間固定金利であるため、金利上昇リスクを気にせず、安定した返済を行えます。
資金受取時に返済終了までの借入金利と返済額が確定するため、金利や物価が上昇しても返済額が上がることがありません。
収入に波がある自営業の人でも、安心して長期的に住宅ローンを利用できます。
自営業の人が住宅ローンを借入するときの注意点
自営業者が住宅ローンを借りる際の注意点をまとめていますので、自分たちの暮らしにどのような影響があるかを見極めてください。
- 自宅を事務所にする場合は居住部分の床面積に注意する
- 住宅ローン控除を行う場合は所得の申告と同時に手続きが必要
- 経営者の場合は追加の書類が必要になる
- 税金対策をしすぎると借入が難しくなる
順番に解説します。
自宅を事務所にする場合は居住部分の床面積に注意する
自営業は自宅を事務所にするケースが多いので、該当する場合は居住部分の床面積が1/2以上になるように注意してください。
そもそも、住宅ローンは居住用の建物を取得する際に借りられるローンであり、事業用の建物は対象ではありません。
ただし、金融機関によっては、居住用面積が1/2以上を占めていれば住宅ローンとしてまとめて申込が可能となります。
事務所の割合が多ければ、事業用の融資で資金調達する必要があります。なお、事務所の割合が多いと、住宅ローン控除が適用できなくなるため注意しましょう。
住宅ローン控除を行う場合は所得の申告と同時に手続きを行う
住宅ローン控除を行う場合は、所得の申告と同時に手続きが必要であることも忘れてはいけません。
給与所得者であれば、2年目以降は年末調整で申告可能ですが、自営業者は2年目以降も通常の確定申告と併せて住宅ローン控除の申告が必要となります。
自営業の人は会社員と異なり、毎年確定申告をしなければならないので注意しましょう。
経営者の場合は追加の書類が必要になる
法人化した会社の経営者の場合は、追加の書類が必要になることも注意点の1つです。
申込時に提出する書類は自営業者と同じですが、直近2年分の法人決算報告書・法人税の納税証明書を追加で求められます。
過度な税金対策をしすぎると借入が難しくなる
税金対策をしすぎると、借入が難しくなる場合があることにも注意してください。
返済負担率を算出する上では、売上から経費を引いた所得を基準とすることが理由であり、所得が圧縮されると審査に影響するだけでなく、借入可能額も下がることを覚えておきましょう。
自営業で住宅ローンを検討する場合は所得を増やすことを優先的に考えると、審査に有利な状況をつくれます。
自営業の人が住宅ローンを申込む際の必要書類
自営業の人が住宅ローンを申込む際、金融機関から基本的な書類以外に求められることがある、必要書類は以下のとおりです。
- 本人確認書類
- 確定申告書の控え
- 所得税の納税証明書
- 団体信用生命保険の申込書・通知書
- 物件・頭金に関する書類
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
本人確認書類
本人確認書類は、自営業者であるかどうかにかかわらず必要な書類の1つです。
住宅ローンの申込で利用できる本人確認書類は以下のとおりです。金融機関にもよりますが、以下の書類のいずれか2種類が必要となります。
- 運転免許証
- マイナンバーカード
- 健康保険証
- 住民票
- パスポート
- 在留カードや特別永住者証明書(外国籍の場合)
なお、健康保険証は勤務先の規模や勤続年数を確認できるため、住宅ローンの審査で重要視される書類です。通常、どの金融機関でも提出を求められます。
確定申告書の控え
自営業の場合、確定申告書の控えが必要になることが会社員との大きな違いといえるでしょう。
e-taxで申告しているケースでは、申告データの他に受領メールなど受理がわかる証明書類の提出も必要となります。
また、直近2〜3年分の提出が一般的であり、金融機関により基準が異なるので、事前に確認しておきましょう。
所得税の納税証明書
自営業の場合、所得税の納税証明書の提出も忘れてはいけません。
税金の滞納がないことを証明することが目的であり、直近2〜3年分の提出を求められることが一般的です。所得税の納税証明書の交付請求先は、現在の住所地を所轄する税務署です。
団体信用生命保険の申込書・通知書
民間金融機関では団体信用生命保険の加入が融資の条件となっているので、申込書・通知書の提出も必要となります。
健康状態や既往歴に不安がある人は、加入が任意であるフラット35を検討してください。
物件・頭金に関する書類
物件・頭金に関する書類も必要な書類の1つです。
それぞれ、以下のような書類が必要になります。
【物件に関する書類】
● 売買契約書 ● 重要事項説明書 ● 請負契約書 ● 設計図書 ● 不動産広告チラシ ● 見積書 【頭金に関する書類】 ● 預金通帳など |
物件に関する書類には、売買契約書や請負契約書、設計図書などが含まれるので、不動産会社や建築会社と連携して準備を進めてください。
頭金に関する書類として預金通帳の提出を求められることもあるので、金融機関に提出が必要かどうかを確認しておきましょう。
自営業者の住宅ローンに関するよくある質問
ここでは、自営業者の住宅ローンに関するよくある質問を紹介します。
- 3期連続で黒字が出ていない自営業者は住宅ローン審査に通らない?
- 業歴が1年未満だと住宅ローンを組めない?
- 自営業でも住宅ローン審査に通りやすい人の特徴は?
疑問の解消にお役立てください。
3期連続で黒字が出ていない自営業者は住宅ローン審査に通らない?
金融機関によっては、3期連続黒字でなければ住宅ローンに通らないおそれがあります。金融機関がチェックする審査のポイントは売上高ではなく、3期の平均所得である点に注意しましょう。
審査基準は金融機関ごとに異なるので、直近何年分の確定申告書控えの提出が必要であるかを事前にチェックした上で、申込手続きに臨んでください。
取引先の銀行や自営業者向けの住宅ローンを積極的に展開している金融機関では、確定申告の書類だけではなく、事業内容や世帯全体での資産状態を含めて判断するケースもあります。
業歴が1年未満だと住宅ローンを組めない?
業歴が1年未満の場合、収入の安定性の面から住宅ローンを組めない可能性は高いでしょう。
ただし、フラット35のように業歴を審査基準に定めていないケースもありますので、必ずしも住宅取得を諦める必要はありません。
フラット35では、2024年に自営業として起業した場合、2024年中は申込できません。2025年1月から申込可能です。
2023年に起業した場合は、2023年に起業後の所得金額を「所得を得た期間」として日割計算し、1年分に割り戻して年間収入とします。
自営業でも住宅ローン審査に通りやすい人の特徴は?
自営業でも住宅ローン審査に通りやすい人の特徴は以下のとおりです。
- 安定した所得がある
- 起業から年数が経過している
- 手元にまとまった資金がある
自営業の場合は、売上ではなく「3年間の平均所得」で判断されるため、安定した所得が3年間続いていれば審査に通る可能性があります。
起業から3年間を目安にしている金融機関も多いため、起業年数が長いほど信頼性が高いと見られます。手元にまとまった資金があるのも強みとなるポイントです。
自営業では節税を重点的に考えがちですが、手持ち資金が多いほど経済的に安定していると見られるため、住宅ローン審査が通るまではある程度の余剰資金を保つようにしましょう。
自営業の人が住宅ローン審査に通るには計画的な資金計画が重要
自営業者で思うように収入が安定していない人は、住宅ローン審査に通るための資金計画が重要です。
住宅ローンの利用を検討し始めたら事業における節税などを見直して、所得を上げるように経済状態を整えておくようにしましょう。頭金を貯めておくと借入額が減少するため、自営業でも審査に通りやすくなります。
ヤマカ木材では、自営業の人が住宅ローンを利用したいときの資金計画のご相談も承ります。理想の家づくりを実現するために、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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